ブログ

小嶋庵としゅんさん家のリノベーション

リノベーション

小嶋さんは京都で10代目続く老舗のちょうちん屋さん【小嶋商店】の職人さん。海の近くでお家と提灯づくりの工房をする物件を探しておられ、空き家探しから設計までお手伝いさせていただきました。

何件か物件を見る中で、海沿いの 集落に建つ築65年の織物工場兼住宅が目に留まり、状態も良いし、大きく間取りを変えなくても住宅と工房に出来そうなことや、

徒歩3分でこの景色という事が決め手となり、この物件をリノベーションする事になりました。

設計するにあたり、京都市内にある工房を見学させていただきました。

小嶋商店ではご家族で各工程を分担しながら手仕事で提灯をつくっておられるのですが、作業の様子が素敵で目が離せない、、、。

これは新しい工房を見に来る人も多分同じ気持ちになる。

それなら、工房は職人さんの作業風景そのものが画になるような背景をつくればいいんだ!と思いました。

その後、南座やPASS THE BATON等の小嶋商店の提灯が吊るしてある建物を案内して頂いてから、ご自宅で生活の調査とヒアリングをする。という贅沢で弾丸な京都旅を経て設計をさせて頂きました。

余談ですが、今回は遠方な上にコロナの影響もあり、zoomで打合せや現場確認をしてもらいながら進めたのですが、時間に融通が利きやすいのでこまめに打ち合わせ出来て、最近の打ち合わせはzoomを挟みながらするのがスタンダードになりました!

そんなこんなで完成したお家のビフォーアフターです!

道路側の外壁面には。 ちりめんをトラックに積む大開口を機(はた)をやめて生活空間にする際に塞いだ跡がありました。

小嶋商店の提灯は大きいものだと2m×1.2mもあり、ちりめんの搬出口が丁度良い大きさだったので窓として再生しています。 工房の入口は解体現場からもらってきた商店の戸をつけ、外壁は提灯の灯りが綺麗に映るグレーの塗り壁としました。

小嶋さんは先代が提灯を制作する横で遊んだり勉強して幼少期を過ごした事で、ものづくりや大人の葛藤に触れた原体験がすごく大切だったと感じて、【小嶋庵】は地域の子供達が気軽に工房に来れるように開かれた工房にしておられます。

機工場だった部屋の before はこんな感じで、元の住まい手さんが晩年を過ごし易いようにバリアフリーのお部屋が出来て生活が工場で完結するようになっていました。

工房は新建材を使うと軽すぎて小嶋さんや提灯に馴染まないと思い、 土壁や柱は元のまま残しています。断熱の為にサッシを入替なくてはならずやむを得ず穴が開いてしまう場所は古材で塞ぎました。

照明は作業灯と提灯をシーンに応じて使い分けられるようにし、ライティングレールを多めに配置して提灯がたくさん吊れるようになっています。

新しく作る壁は、日中の見学や体験の方に提灯の灯りが影として見える様に黒い 鉄塗料 を、小嶋さん一家と一緒にを塗りました。ランダムで凹凸のあるテクスチャーが良い陰影をつくっています。

実はこの壁、当初は酸化剤を塗って錆びさせる予定でしたが、試し塗りしたところ思ったより錆び方がきつくて、素地状態で残す事になりました。ゆるやかに錆びて壁が育っていくのが楽しみです!

住宅部分は縁側のある田の字の間取りでした。

田の字の半分は天井を抜いて提灯を吊れるようにし、 1室空間の 開放的なLDKになりました。

日常の灯りが提灯ってとても落ち着きますね。

奥さんと一緒に考えたコの字型キッチンは無駄なものをそぎ落とした使い勝手の良い仕上がりになりました。

気持ちのいい縁側はほぼそのまま残し、

奥にあった倉庫の様な空間は

小上がりの趣味部屋になりました。openhouseの時は、小嶋さんのキングダムと子供達のおもちゃで領地を取り合っていました。

洗面所は2人並んで使える広さにして、下はバスケットの入る棚があります。

玄関は 魔除けの獅子の提灯がお客さんをお出迎え。

玄関奥にはシューズクローゼットを兼ねた工房と家の接続エリア。小嶋さんは工房から家に帰る時に、この場所で竹のついた作業衣から家着に着替えます。

階段は途中にキッチン上の小屋裏収納に入る入口があります。

回り階段の途中に玄関の提灯の吊り替えが出来るスペースがあります。

2階は2間続きの子ども室+寝室+単独の子ども室。

住宅の玄関は外壁が焼杉だと服が汚れてしまうのでタイルになっています。

そんな盛りだくさんの大きなお家は、約60坪もあり、間取りは25畳のLDK・35畳の工房・小上がり・子ども室3室・寝室・洗面・ウォ-クインクローゼット・トイレ×2・脱衣室・浴室・工房給湯室。

この間取りで断熱・耐震補強もして、費用は新築約35坪1軒分くらい。

この贅沢な空間はこの年代の丹後の空き家あってこそ。今から取り壊しを考えている方は、こういう住まいの可能性も考えてみても良いかもですね。

そして難易度の高い工事を丁寧かつ親切に施工してくださった、株式会社 杉建さんありがとうございました!

今回お手伝いさせていただいた【小嶋庵】は、提灯づくり体験や見学をしておられます。皆様是非遊びに行ってみてください!

小嶋さんの熱い想いはTHE KYOTOさんの記事で是非ご覧ください!

https://the.kyoto/article/kojimaan_cf

ちなみに先日発売のVOGUE 12月号に小嶋庵の特集が掲載されていますので書店で見かけた方は手に取ってみてください!峰山の【まちまち案内所】にも1冊おいてあります!

最近のU設計は、ブログが渋滞して近況報告が出来ておりませんが住宅、コンペ施設などいろんなプロジェクトが動いています。最近完成した【まちまち案内所】https://motion-gallery.net/projects/machi-machi

や、【ミキモト化粧品店とハイジさん家のリノベ】については、順番にブログに書いていく予定です。年内は無理かもしれないですが書きます。

長いブログになりましたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!最後に小嶋さんのサービスショット!いやーかっこいい。